角川歴彦(2020年3月4日、映画「Fukushima 50」(フクシマフィフティ)の記者会見) 写真/ZUMA Press/アフロ 

(田丸 昇:棋士)

東京五輪汚職で逮捕

 東京地検特捜部は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事(78)が、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKI」から賄賂を受け取ったとして、8月17日に受託収賄容疑で逮捕した。その事件の余波はさらに広がっている。

 同じく大会スポンサーだった出版大手「KADOKAWA」が、高橋元理事と関係が深いコンサルタント会社に、2019年9月から2021年1月まで約6900万円を入金したことが、スポンサー選定に関する高橋元理事らへの賄賂との疑いを深めた。

 KADOKAWA会長の角川歴彦(79)は9月5日に記者団を前にして、「自分に決裁権はない」「賄賂を渡した認識はない」「自分たちの精神を汚してまでも仕事しろなんて言いません」「コンサルタント料は高橋元理事に渡ってないと思う」などと語り、自らの潔白を主張した。

 しかし、東京地検は9月6日にKADOKAWA元役員の2人を贈賄容疑で逮捕し、角川会長の自宅を家宅捜索した。そして9月14日、角川を同容疑で逮捕した。

「電王戦」の企画は、社会的にも注目

 角川歴彦は、1993年(平成5)に角川書店の社長だった兄の角川春樹(80)がコカインの密輸事件で逮捕されて辞任した後、社長に就任して会社の再建を図った。

 その後、祖業の出版を軸にして、映画やアニメなどの映像分野にも事業を拡大した。2014年には、インターネット動画中継サイト「ニコニコ生放送」で知られるドワンゴと経営統合。プロ棋士と将棋ソフトが対戦した「電王戦」の企画は、社会的にも注目された。

 私こと田丸昇九段は、タイトル戦の対局を配信した「ニコニコ生放送」の番組で解説者を何回か務めた。視聴者からの対局や解説についてのコメントが、リアルタイムで画面に数多く流れていくのは、かつてなかった双方向の趣向として面白かった。