日本語が通じるのは10人中1~2人
初出勤では、いきなり外国籍の人たちの行動に驚かされる。
「9時始業なのに8時55分に行っても、工場にほとんど人が見当たらない。時間を間違えたのかと慌てていたら、9時になった途端に、雪崩を打ったように人が集まってきた。彼らには『5分前行動』という文化がないみたいで」
パチンコ台の組み立ては、電動ドライバーを使って、基板のねじ止めなどを行う作業だった。およそ100工程のうち、10工程くらいを1~2週間で仕上げ、それぞれのパーツを作りだめし、徐々に部品をつなぎ合わせていく流れだ。
「もし働いているのが日本人の学生アルバイトだけだったら、1カ月くらいで終わるような作業。しかし日本語が通じない人ばかりなので、効率が悪く、完成までに2カ月以上はかかっていた」
年齢層は20~40代で、男女比は半々くらい、ブラジル人、フィリピン人、ペルー人などが多かった。
中でもQさんの住む県は、日系ブラジル人との共存の歴史が長い。日本の人手不足を補うために90年代に来日した彼らは、すでに二世三世の時代になり、日本しか知らない世代も増えている。
それなのに、日本語が不自由な若いブラジル人が多いことに、Qさんは驚かされたという。
「この工場は来日して15~30年以上という人が多いのに、日本語の会話が成立するのは、10人中1~2人程度。日本人なら5分でできる作業も、言葉が通じないと教えるだけで30分はかかる。工場の社員たちはキレながら日本語で説明し、時にはコミュニケーション自体を放棄してしまっていた」