「グローバルな人」ってなんだ?

 Qさんは地方に来た時、地元企業の人と「話が通じない」と嘆いていた。もしかしたら、Qさんは地方の人をどこか下に見ていたのではないか。

 反対に、工場のブラジル人たちとは「よそ者」という共通点があったから、言葉の壁を越えようと気持ちが動いたのかもしれない。

 相手を見下したり、極端にへりくだったり、「心の壁」は言葉の壁より分厚い。

 Qさんがパチンコ工場の副業を始めて1年が経った。週に1回の出勤だが、工場にはたくさんの知り合いができた。ポルトガル語に加えて、最近はスペイン語をググりながら使うこともあるそうだ。

「もうしばらく、このバイトは続けようと思っている。いろいろ考えさせられることが多かったし、デザインの仕事を続けられるありがたみもわかったから」

 白トレーナーを小粋に腕まくりする「ギョーカイ人」のQさん。今も地元の日本社会では浮きまくっていることが容易に想像できる。本業のデザインの仕事は、相変わらず東京からの発注のみだ。

 Qさんの心のグローバル化は、今始まったばかりなのかもしれない。