日本の消費者物価指数がとうとう3%(総合値)を突破した。日銀の黒田総裁は物価上昇率について、「年明け以降2%を割るのは確実」としているが、足下の物価は上昇を続けている。来年(2023年)以降、物価は以前のペースに戻るのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)
日銀が頑なに同じ政策を続ける理由
総務省が発表した8月の消費者物価指数は、総合指数で前年同月比プラス3.0%となり、3%の大台を突破した。生鮮食品を除く総合は2.8%となっており、こちらも3%目前だ。アベノミクスでは、2%の物価上昇率が目標だったので、数字上はとっくに目標は達成しており、そこからさらに上振れする状況となっている。
本来なら、予定されていた物価上昇率を超えているので、大規模緩和策は終了し、金利の引き上げなど、正常化に向けて動き出すのが妥当な判断ということになる。だが、日銀は相変わらず大規模緩和策を継続しており、ゼロ金利政策が続いている。
物価上昇率が目標値を超えているにもかかわらず、大規模緩和策を継続していることについて黒田氏は、今、発生しているインフレはコストプッシュ型のインフレであり、長続きしないという予想を論拠にしている。実際、黒田氏は会見などにおいて「年明け以降、物価を押し上げている要因は弱くなるため、消費者物価上昇率が2%を割るのは確実」と、かなり断定的な物価見通しを示している。
日銀の政策を支持する一部の専門家も、コストプッシュインフレとディマンドプルインフレはメカニズムが異なるので、個別の対応が必要と主張している。加えて日銀は、フォワードガイダンスという非伝統的な金融政策を採用しており、金融政策の先行きについて明確なメッセージを発することを基本方針にしている。フォワードガイダンス下においては、総裁の発言がコロコロ変わることはあり得ないので、今の日銀の一貫したスタンスは基本戦略に沿ったものだとの解釈である。