次期大統領選への出馬もささやかれるポンペオ元国務長官は、米国はエネルギー増産でロシア・中国に対抗すべきだとの考えを持つ(写真:AP/アフロ)

(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

バイデンは「ガスのロシア依存をドイツに許した」

 米国は民主党と共和党で真っ二つに割れていることはよく知られている。

 その中でも、気候変動問題は最も対立が深刻だ。

 民主党は「気候危機」説を支持しており、「2050年CO2ゼロ」といった極端な脱炭素が必要だとする。脱炭素政策のことを米国では「グリーンディール」と呼んでいる。

 これに対して共和党の議員や支持者の多くはそもそも「気候危機」説を信じていない。地球温暖化は起きているにしても、それほど甚大なものではないという理解だ。それよりも、「グリーンディール」によって国家の安全保障や経済が大きく悪影響を受けることについて、強く反対し、米国は化石燃料を含めてエネルギーを増産すべきだとしている。

 このことは、ウクライナでの戦争が始まってからの共和党の重鎮たちの発言からよく分かる。

 元国務長官で次期大統領選への意欲があるとされるマイク・ポンペオ氏は「ロシア・中国に対抗するために、米国は化石燃料を含めてあらゆるエネルギーを増産し、エネルギー・ドミナンス(優勢)を実現せねばならない」と論じた。

 有力な上院議員でかつてトランプ氏と大統領候補を争ったテッド・クルーズ氏は、バイデン大統領の「2つのパイプライン」についての政策を批判した。すなわち、バイデン氏は米国内のキーストーンXL石油パイプライン(カナダから米メキシコ湾まで原油を運ぶパイプライン計画)については環境問題を理由に建設を阻止したが、その一方で、ドイツがガス供給をロシアからのパイプラインに依存することは許してしまった。自国を痛めつけておいて、敵の力の伸長を許すとは何事か、と糾弾している。