(舛添 要一:国際政治学者)
7月8日、参議院選挙の遊説中に安倍晋三元首相が銃撃されて死去するという許しがたい犯罪が行われてから2カ月が経った。この2カ月間に、この事件がきっかけとなった問題で日本の政治が大きく揺らいでいる。
言うまでもなく、統一教会問題である。それは、安倍元首相の国葬にも波及し、反対が賛成よりも多くなっている。
海外に目を転じれば、ウクライナ戦争は停戦の見通しは全く立たず、エネルギーや食料品などの価格が高騰している。また、アメリカのFRBはインフレ対策のため、金融引き締めで公定歩合を高めに設定し続けているために、1ドル=144円という円安になっている。これもまた、輸入品の価格上昇を通じて、日本経済に打撃を与えている。
日本は内向きになっている暇はないのに、マスコミでも統一教会や国葬問題がトップの扱いになっている。
国葬、世論を見誤る
岸田首相は、7月14日の記者会見で、安倍元首相の葬儀を国葬とすると発表した。事件後、わずか6日目の決定である。翌日の新聞報道を見ると、たとえば日経新聞には、自民党の反応として、「国葬でなければ国内外の信用を失う」とか、「国葬にしなければ支持率に響く」とかいった文言が並んでいる。
事件の衝撃が大きく、突然命を絶たれた安倍元首相への哀悼心が、そういう世論の雰囲気を醸成したと岸田首相は判断したのであろう。しかし、この段階から、実は判断ミスがあったと言わざるをえない。政府寄りの産経新聞の世論調査(7月23、24日実施)ですら、賛成(国葬決定は「よかった」)は50.1%で、反対(「よくなかった」)が46.9%と拮抗していたのである。
産経新聞も、この事実を隠したかったのか、見出しには<自民支持層7割「国葬」評価、「よかった」若者ほど多く>と岸田首相の決定に胡麻をするような活字が踊っている。