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 15年後に生き残れるのは、どのような自動車メーカーなのか? 脱炭素化、AI普及など、世界が「ニューノーマル」(新常態)に突入し、ガソリンエンジン車主体の安定した収益構造を維持できなくなった企業が考えるべき新たな戦略とは? シティグループ証券などで自動車産業のアナリストを長年務めてきた松島憲之氏が、産業構造の大転換、そして日本と世界の自動車メーカーの、生き残りをかけた最新のビジネスモデルや技術戦略を解説する。

 第10回は、タイの自動車市場における日本車の販売低迷、バッテリーEV(BEV)の急拡大と中国系メーカーの躍進をレポートし、日系メーカーの巻き返し策を考える。

不振にあえぐタイの自動車業界

 今年9月にタイの日系自動車メーカーや自動車部品メーカーを訪問したので、今回はタイの自動車業界の状況を解説する。

 タイは日系メーカーにとっての極めて重要なキャッシュカウ(金のなる木)であったが、最近の自動車販売の低迷やそれに伴う収益悪化で苦境に陥っているというのが実感だ。

 タイの2024年7月の新車販売台数は前年同月比21%減の4万6394台だった。2023年6月から14カ月連続で前年割れとなっている。販売低迷の最大の理由は、家計債務比率の高まりによる自動車ローンの利用率の低下で、トヨタ自動車(以下、トヨタ)やいすゞ自動車(以下、いすゞ)など日系自動車メーカーの販売は軒並み落ち込んでいる。後述するように、乗用車における中国製BEV(バッテリーEV、電気のみをエネルギー源として走行する車)の躍進の影響も大きい。

 これまではタイと言えば、トヨタ、いすゞ、三菱自動車工業(以下、三菱)、日産自動車(以下、日産)などの1トンピックアップトラックが主役であった。農村や個人事業主を対象とした、商用と乗用を兼用できるピックアップトラックが、長年にわたりタイ市場の過半数を占めてきたが、この販売がローン審査の厳格化などの影響で不振に陥っている。

 また、都市を中心に普及してきた乗用車も長年にわたり日系自動車メーカーが独走していたが、ここに中国系BEVが割り込み、日系車の販売台数が減少している。