人工呼吸器はずっと余っていた
その原因は、他の基礎疾患で死亡したコロナ陽性の患者をコロナ死者としてカウントしているからだ。実態は患者個人のデータを見ないとわからないが、推測する方法はある。コロナ肺炎が重症化して死亡する場合は、人工呼吸を受けるのが普通だが、その実施件数がほとんど増えていないのだ。
図1は人工呼吸器の実施件数だが、愛知県では2~6件と、受入可能数108件をはるかに下回る。この数字をみるかぎり、医療が逼迫することは考えられないが、医療現場が大変なことも事実のようだ。
それはコロナが「新型インフルエンザ等感染症」として、感染症法上の2類以上の扱いを受けているからだ。ここではすべての感染者を全数把握することが原則なので、症状の有無にかかわらず、検査陽性の場合はすべて隔離する。医療費は全額、公費負担となる。
このため感染力の強いオミクロン株では検査陽性者が増え、その濃厚接触者も増えたため、大病院の発熱外来に利用者が殺到した。このため検査陽性も増えたので、軽症患者を収容すると病床が埋まり、他の重症患者の治療ができなくなってしまう。
オミクロン株はほとんど重症化しないので、無症状の感染者を把握する意味はない。陽性者数はPCR検査を増やせば増えるので、統計的には無意味な指標である。医療危機が起こらない必要十分条件は
重症者数 ≦ 人工呼吸器数
という不等号が満たされ、医療資源に余裕があることだ。これは2020年2月に専門家会議が出した方針である。上の図でもわかるように、この不等式が満たされなかったことは(全国どこでも)この2年半に1度もない。
それなのに医療が逼迫している最大の原因は、医療資源のミスマッチである。これは日本の医療が医師会の強い政治力で歪められ、開業医中心で大病院が3割しかない非効率な病院経営が続いているためだ。
2類以上の扱いのため、開業医がコロナを診察できず、全額公費負担なので不安な人は何度も発熱外来に行くため、大病院のベッドが風邪の患者で埋まってしまう。どんな高度医療も無料なので価格メカニズムがきかず、入院患者が退去しない。