8月10日、日本外国特派員協会で会見を行った田中富広・世界平和統一家庭連合会長(写真:AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 岸田文雄首相が内閣改造、自民党役員人事を実施した10日、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が、日本外国特派員協会で記者会見を開いた。

 会見に臨んだ田中富広会長は冒頭、安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件に触れ、「心から元首相のご冥福をお祈りいたします」と述べると同時に、

「犯人とされる容疑者が、当法人・家庭連合への恨みを動機として行動に出たという報道に触れ、私どももとても心重く受け止めております。社会の皆さまにも、様々にお騒がせしていることに、深くお詫び申し上げます」

 と、深々と頭を下げてみせた。

「2009年以降、コンプライアンスを徹底している」というが

 ところが、その舌の根も乾かぬうちに、

「さて、安倍元首相が凶弾に倒れられた直後から、容疑者の犯行動機が、当法人の信者である母親の献金によるものであると、未だ確定もしない情報から、昨今の当法人に対する過剰なメディア報道によって、当法人の信徒から様々な被害が報告されております」

 と言い出したかと思えば、一方的なマスコミ批判をはじめる有り様。

「全国の教会に『殺すぞ』と叫ぶ脅しや、脅迫電話、街宣車での大音量による罵声。そして、集会妨害。一般信徒の自宅にまで夜に朝に押しかけての、メディアからの過剰取材。さらには、信徒の子どもたちが、学校やサークルで受ける、いじめによる登校拒否。あるいは、信仰を理由に、会社を辞めるよう追い詰められたり、家庭内では、離婚状を突きつけられた家庭もございます」

 そんな調子で“被害者”であることを強調。2009年に信者が高額商品の販売をめぐり刑事事件にまでなったことを受けて、「財産に比しての高額献金がないよう努力を重ねている」として、関連した民事訴訟の件数も減った、と豪語。そこでフリップを掲げて、係争中の裁判は1998年の78件をピークに、2022年は5件にまでなったと説明する。だが、宗教法人が5件“も”裁判を抱えていることのほうが異常だ。