(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件から、8日でちょうど1カ月になる。

 事件をきっかけに、日を追うごとに統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政治家、それも自民党議員との関係を問題視する世論が高まってきた。共同通信が7月末に行った世論調査でも、統一教会と政界の関わりについて実態解明の「必要がある」と答えた人は8割にのぼる。

 そして、10日に予定されている内閣改造、自民党役員人事を前に、岸田文雄首相は6日の記者会見で閣僚などの人選をめぐり、統一教会との距離を重視する考えを示した。

「新たに指名する閣僚だけでなく現閣僚や副大臣も当該団体との関係をそれぞれ点検し結果を明らかにしてもらう。その上で適正な形に見直すことを指示する」

 首相本人は「私個人は知る限り、当該団体とは関係ない」としながら、こうも語っている。

「閣僚は国民に疑念を持たれないように、社会的に問題が指摘される団体との関係は十分注意しなければならない」

 呆れるのは、岸田首相も統一教会が「社会的に問題が指摘される団体」であることを認識していたことだ。

心に傷を負った人に忍び寄る霊感商法

 安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者(41)は、母親がのめり込んで多額の献金で家庭が崩壊したことから統一教会に恨みを持ち、関係のある安倍氏を襲ったと供述。母親は親族に無断で家や土地を売って1億円近くを教団に寄付していたことも報じられている。その母親が教団にのめり込んだきっかけは、夫すなわち山上容疑者の父親の自殺だったとされる。

 それがひとつの典型であるように、統一教会は、家族の死や家庭のトラブルなどで傷ついた人の弱みに付け込んで、「不幸なのは先祖の因縁だ」「供養しなくてはいけない」「このままではあなたも地獄に堕ちる」などと言葉巧みに脅し、教団への献金を持ちかける。高額の壺や多宝塔などを売りつける。それが霊感商法と称されて久しい。

 いまでは、正体を隠してビデオセンターに誘い込んで信者にしていくケースも目立つ。こうした献金や勧誘行為、信者獲得手法については、違法とする司法判断があとを絶たない。