垂直統合が効果を発揮
上半期におけるBYDの躍進理由としては、まず新エネルギー車市場の拡大が挙げられます。

冒頭でも述べた通り、今年上半期に中国自動車市場は全体で前年割れとなりましたが、一方で新エネルギー車の販売台数は前年同期比115%増の260万台を記録し、倍増が続いています。世界で三菱自動車の次に電気自動車(EV)の量産を開始し、新エネルギー車業界において老舗といえるBYDも、「新エネルギー車市場の急拡大」という大きな追い風を受けています。
もう1つの理由として、ロックダウンに伴うサプライチェーンの混乱に各社が苦しむ中、BYDは重要部品を自社調達する垂直統合の強みが効果を発揮したとの指摘があります。
BYDは元々電池メーカーとして事業をスタートしています。電池事業は現在も続けており、電気自動車(EV)の最重要部品である動力電池をBYDは自社で生産し、自社の完成車に搭載しています。
先の上海ロックダウンではサプライチェーンが大混乱を起こし、どのメーカーも部品や原材料の供給不足により、ほぼ例外なく大幅な減産に追い込まれました。しかしBYDは他のメーカーとは異なり、供給不足が深刻だった動力電池を自社調達していました。そのため、減産幅を最小限に抑えられたと指摘されています。
この間、自動車販売の現場では車両の「弾(たま)不足」ともいうべき状況にありました。その中で、安定して車両を供給することのできたBYDが購買ニーズを一手に引き受けることとなり、販売台数を大きく伸ばす一因になったとみられます。