教訓4:警護のための準備時間が足りなかった
安倍元総理が、当日その現場に来ることが判明したのは前日であった。警護関係者にとって、前日に伝えられても十分には準備できない。
私は、自衛隊の12師団や空挺団で政治家が来隊する行事の警備を直接担当し、責任者でもあったことがある。何日も前から準備をしたことを覚えている。
VIPの行動の確認、計画の立案(近くでの直接警護と離れたところでの間接警護)、シナリオ検討(図上研究のため地図の準備)、部隊長に報告と指導を受け、警備要員の人員調整をし、要員を集めて警備要領を徹底した。
具体的には、敵は誰で、この方向から攻撃してくる、そこに配置する警備員に、どうするのかと質問し、実演を行う。
何パターンも確認するのだ。当然、通信チェックし、通信による警報を発せられるようにしておかなければならない。
さらに、所轄の警察署との調整、自衛隊の刑務隊・調査隊との調整も事前に行う。
選挙演説の場合は、警備関係者と政治家との調整は当然行われるべきである。
前日の依頼では、調整するような時間はあるはずもない。詳細は不明だが、立候補者やその支援者に警備についての案があったのかどうか大きな疑問だ。
警備の準備の時間を与えなかった立候補者とその関係者は、そのことに自覚と反省はあったのだろうか。
警護の仕事は警察の仕事だ、責任だということだけでは、やらされた方が悲劇だ。
日本の警察は優秀だと評価されている。だが、限界を超えたことをやらされれば、できないことが出てくるのということは予想できる。
防御戦闘でも、長期間防御の任務を与えるには、長期間の防御準備時間を与えなければならないことになっている。
狙われる可能性があるVIPを警護するには、より多くの準備時間が必要であるということだ。