米中覇権争いに巻き込まれたくないが・・・
安倍氏による新しい積極外交は日本国内で物議を醸したものの、アジアではそういうことはあまりなかった。それについては、意外だと感じる人もいるかもしれない。
何と言っても、特に東南アジア諸国は、中国と米国がアジア地域の覇権を懸けて大がかりな地政学的争いをするとなれば、あからさまに引きずり込まれるのは避けたいところであり、日本はその米国にとって欠くことのできないアジアの同盟国だからだ。
しかし、アジア諸国にとって日本は魅力の多い国だ。商業的なつながりは深い。
また、日本政府が後ろ盾になっている援助や借款は東南アジア諸国にとって、中国の「一帯一路」によるインフラ整備融資に代わり得るありがたい選択肢だ。
中国は自分たちが作った物語を押しつけ、これに同意せよと政治的プレッシャーをかけてくるが、日本はそういった圧力なしに投資や技術移転などの良い話を提案してくれる。
オーストラリア元首相のケビン・ラッド氏は、日本の存在が「中国政府との付き合いにおいて外交政策上の助けになる」と述べている。
今年3月には、中国の影響下に入ったカンボジアの独裁者フン・セン氏が、日本の岸田文雄首相をこれ見よがしにもてなした。
中国が何も言わずにいたことが、その衝撃の大きさを物語っていた。
深く関与するパートナーとしての日本
日本が他国にあれこれ説教をすることは稀だ。そのせいもあって、米国との間にわだかまりのある指導者でも、日本とは問題がないことが多い。
フィリピンのフェルディナンド・マルコス新大統領は、前任のロドリゴ・ドゥテルテ氏と同様に米国に不満を抱えている。
だが、やはりドゥテルテ氏と同様、防衛面での協力を含め日本と付き合うことに懸念を全く示していない。
そして、今日の日本は以前よりもはるかに深く関与するパートナーになっている。
これは安倍氏が成し遂げた大きな変革のおかげだ。