東京都新宿区の防衛省本省(写真:アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 7月8日、安倍晋三元首相が暗殺されました。事件とは無関係ですが、その直前の7月1日に、政府内で安倍元首相の影響力を削ぐ人事が実行されていることをご存じでしょうか。

 その人事とは、第2次安倍政権において6年半にも及ぶ異例の長期にわたり総理秘書官を務めた、安倍元首相の腹心とも言える島田和久防衛事務次官の退任です。この人事は、安倍元首相や岸信夫防衛大臣が反対したにもかかわらず、官邸の強い意向で強行されました。

 その理由は、防衛費増額を主張する安倍元首相ならびに岸防衛大臣と、財務省の意向を汲み緊縮財政を目指す岸田文雄首相の意見の相違があったと報じられています。

(参考)
・「島田防衛次官、退任し参与に 官邸は留任認めず」時事通信
・「防衛省 島田和久前事務次官が防衛大臣政策参与に」NHK

 焦点となるのは、現在改訂作業が行われている戦略3文書です。

 先に述べたとおり、この人事は事件とは直接的な関係はないはずです。ただし、島田氏退任の直後に安倍氏が死亡したことで、日本の防衛政策に非常に大きな影響を与える可能性があります。