「ロシア海軍の日」軍事パレードを視察するプーチン大統領(資料写真、2021年7月25日、写真:ロイター/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 プーチン政権下において一時復活の兆しが見えかけたロシア海軍であるが、造艦部門をはじめとして深刻なトラブルに見舞われている。

 とくに水上戦闘能力は問題山積であり、なかでも元々弱体と言われていた水陸両用能力(海洋側から侵攻戦力を陸地に接近到達させる能力)が全く役立たずであった状況がウクライナ戦争で白日のもとにさらされてしまった。もしロシアの水陸両用戦力が米軍(海軍・海兵隊)ほどではなくとも中国軍(海軍・海軍陸戦隊)レベルの能力を持っていたならば、ウクライナ南部の戦略要衝は早々にロシア側の手に落ちていた可能性が高い。

 ただし日本でも報道されているように、ロシアの水上戦闘艦艇がウクライナの地対艦ミサイルによって撃破されている状況は、ロシア海軍水上戦力に限った弱点というわけではない。各種地対艦ミサイルシステムの性能が向上している現在、敵の沿海域・近海域での水上艦艇の作戦行動は、極めて危険であることを具体的事例として提供しており、世界最強の地対艦ミサイル戦力を構築した中国軍の接近阻止戦略の有用性を如実に物語っていることになる。

「恐るべき最終兵器」を搭載する“調査潜水艦”

 水上戦闘能力が深刻なるトラブルに見舞われているロシア海軍とはいえども、潜水艦戦力となると話は別だ。