物語はそのあとも、もちろんつづく。地中海に浮かぶ要塞島での銃撃戦も印象深いが。やはり、なんといってもジョアンナ・シムカスが美しかった。映画の中で、シムカスが好きだったのは、アラン・ドロンではなくリノ・ヴァンチュラだった。当時は、そういうものか、と思ったのだが、いまになってみればわかる。美男は美女と結婚するのではないし、美女も美男を選ぶのではないのである。

 口笛だけで演奏される主題曲は抒情的で不滅の名曲である。この曲を聴くといまでも、一抹のもの悲しさがあるものの、心が自由いっぱいに広がるような気分になる。

※『冒険者たち』に出演したジョアンナ・シムカスについては「「黒人俳優」の先駆者シドニー・ポワチエの“知”の演技」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68587)で詳しく語っている。

9 『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012、165分) クエンティン・タランティーノ監督・脚本。ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン。

 もともとジャンゴとは、イタリア映画『続・荒野の用心棒』(1966)の原題であり、かつ主人公の名前である。主演のフランコ・ネロが精悍そのもので、またルイス・バカロフ作曲の主題歌が最高によかった。この『ジャンゴ 繋がれざる者』でもいきなり、その歌がかかって、いやがうえにも気持ちが盛り上がる。

 南北戦争2年前、ドイツ人の賞金稼ぎのドクター(クリストフ・ヴァルツ)に助けられ、解放された奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)。ドクターに連れられ、売られた妻を探してミシシッピーで有数の金持ちの大農場主のところへいく。

 この農場主がディカプリオで、あの童顔のくせに、ここでも役に応じてなんでもこなすという演技の幅の広さを見せつけている。童顔なのに貫禄の熱演である。その牧場への老人の招待客がどっかで見た顔だなあと思っていると、なんと元祖ジャンゴのフランコ・ネロがカメオ出演しているではないか。

『ジャンゴ 繋がれざる者』でのレオナルド・ディカプリオ(写真:Collection Christophel/アフロ)

 ディカプリオの執事役(?)の、サミュエル・L・ジャクソンが、小狡くいやらしい役を演じきっている。この俳優はタランティーノのお気に入りだ。