10 『ラ・ラ・ランド』(2016、128分) デミアン・チャゼル監督・脚本。ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン。

 ミュージカルで、最初はまったく興味がなかった。見るつもりはなかったのだが、なんの気まぐれか、見てびっくりした。映画の入り方が大掛かりでシャレていて、思わず引きこまれてしまった。冒頭、エマ・ストーンが入ったレストランでの抒情的な曲がよかった。弾いていたのはアルバイト・ピアニストのゴズリングである。

 男と女のありふれた恋と別れが描かれるが、切ないのは再会だ。女優になることを夢見ながらカフェで働く女ミアと、自分の理想的なジャズバーを経営することが夢のピアニストのセブ。ミアはオーディションに落ち、セブはレストランを首になる。そんなふたりが恋に落ちる。

 やがて、ひとりはすこしずつ夢に近づき、ひとりは失意に落ちていく。生きる道が分かれていく。生きたいと思った人生と、生きられなかった人生、そしていま生きている人生。そんなとき、何の偶然かふたりは再会をする。その悲しみと、諦めたしあわせが、この映画の真の面目である。ほんと、人生とはうまくいかないものだね。

『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンとライアン・ゴズリング(写真:Photofest/アフロ)

 歌と踊りが予想以上によかった。劇中歌“City of Stars”の曲が耳に残る。最後の延々とつづくクレジットなど、ふつうなら飛ばして見ないのだが、余韻に浸りながら最後まで見てしまった。溜息ものだ。

『定年後に見たい映画130本』(勢古浩爾著、平凡社新書)