朴槿恵大統領の弾劾訴追につながった「崔順実ゲート事件」。朴政権の影の主役と言われた崔順実氏(写真:新華社/アフロ)

(ミン・ジェウク:日韓関係専門家、フリー記者)

「能力がないなら、お前の両親を恨め。お金も実力よ」

 この一言で、韓国中の若者から顰蹙を買ったチョン・ユラ氏が、再び韓国に戻って来た。彼女は、朴槿恵(パク・クネ)政権の国政壟断(ろうだん)疑惑事件における主人公で、「影の実力者」こと崔順実(チェ・スンシル)氏の娘であり、韓国左派から総攻撃の対象になった人物だ。

 韓国人は、彼女のことを「乗馬王女」と呼んだ。一頭、数億ウォンの名馬に乗り、国内の様々な大会で、競争することなく入賞していたからだ。

 2014年秋の梨花女子大の面接試験では、事前に「総長が選べと言ったから」と、面接委員が高い点数をつけ、乗馬特待生として入学することができた。入学後は、教科の担当教授が、課題を代行したり、答案用紙を代筆したりして単位を修得した。

 このような不正が明るみに出ると、韓国左派は、ユラ氏のことを「金のスプーンを超えた神のスプーン(親の七光りどころか、神の七光り)」だと、一斉に攻撃を始めた。

 ユラ氏の入試に関与した教授は、全員、手錠をかけられて監獄へ行く羽目になった。裏口入学疑惑が浮上して3カ月も経たずに、彼女は、大学と高等学校の入学を取り消された。

 最終学歴が中卒になったユラ氏を捉えようと、韓国メディアは、2016年1月、彼女が退避していたドイツまで追いかけてカメラを向けた。

 有名な左派メディアJTBCは、ドイツのフランクフルトから1000km以上も離れた、自動車で12時間以上かかるデンマークのオールボーまで行き、彼女の隠れ家を直撃。まるで「正義は勝つ」かのごとく報道した。

 ユラ氏は、罰金として全財産を追徴されたと主張し、「お母さんの罰金だけで200億ウォン。お母さんの財産はすべて押収された。追徴金も60億ウォンを超え、家屋以外の財産は何も残っていない。私も今は収入がなく、なけなしのお金で暮らしている。私もお先真っ暗だ」と涙声で話した。

 ユラ氏の母である崔順実は、ユラ氏の裏口入学疑惑で懲役3年、国政壟断疑惑で懲役18年が確定し、清州女子刑務所に服役中である。

 左派の政治工作によって学校の卒業は取り消しになり、全財産を奪われ、夫と別れ、実母と離ればなれにされたユラ氏の人生はどん底まで落ちた。

 それでも今年、6年近く音信が途絶えていたユラ氏の再登場は、韓国社会を驚かせている。