北朝鮮に人質として送られた朝鮮総連の幹部子弟は厳しい人生を強いられたという(写真:AP/アフロ)

 前回の拙稿「北朝鮮の金づるも今は昔、苦境に陥る朝鮮総連に金正恩氏が感じている不安」で書いたように、5月28日、北朝鮮は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の第25回全体大会に、金正恩(キム・ジョンウン)総書記名義の書簡を送った。

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 書簡とは謳っているが、実際の内容は北朝鮮の独裁者による「教示」と言っても差し支えない内容だ。朝鮮総連の中央本部や各都道府県の総連組織、そして総連の同胞たちが、書簡の内容に沿った各種学習を強要することになるであろうからだ。

 さらには、書簡で提示された朝鮮総連の再生という難題を通して、同胞たちの思想を再検証し、彼らの忠誠心を評価することにもなる。

 北朝鮮国内よりも、朝鮮総連の方が厳しい規律と忠誠心の中で生きているという話を、私は北朝鮮にいる時に聞いたことがある。

 金正恩氏は今回の書簡で、現時点での総連の基本任務は各界各層の同砲たちの心を一つにまとめ、在日朝鮮人による祖国統一運動の新しい全盛期、総連復興の新時代を力強く築くよう、叱咤激励した。

 同様に、総連は愛国・愛族精神に燃える多くの同砲たちの絶え間ない力を唯一無二の原動力とし、総連復興の新しい時代を確実に切り開いていかなければならないとも力説している。

 私は金正恩氏の書簡を読み、怒りに打ち震えた。個人の幸福と理想を重視する今の世界にあって、北朝鮮の国民に貸している苛酷で息の詰まる、全体主義的な人生を在日同胞にまで押しつけようとしているからだ。

 なぜ朝鮮総連の同胞たちは、世界でもっとも発展した、自由で豊かな資本主義国家に生きているのに、精神と魂を北朝鮮に捧げて生きなければならないのだろうか。朝鮮総連の同胞が今も北朝鮮の使いっ走りになっているのはなぜなのか。気がかりなこと、この上ない。