(ミン・ジェウク:日韓関係専門家、フリー記者)
韓国は今、「運動圏」こと主体思想派出身(北朝鮮及び朝鮮労働党の政治思想)の子供たちの争いで騒々しい。
「平等」を掲げて、社会主義陣営として立ち上がった運動圏の彼らだったが、ふたを開けてみれば、あらゆる種類の特権と恩恵を享受していたことが明るみに出ている。
韓国の左派は、1990年代の学生運動を中心に形成された。彼らは「主体思想派が掌握した世代」と呼ばれている。
彼らは民主化の波に乗り、韓国の政治及び社会の中心で労働運動や進歩的な政治運動などに関わり、粘り強く勢力を拡げた。その結果、韓国の既得権の最高峰にまで上り詰めた。
韓国では、彼らのことを「1980年代大学入学」「1960年代生まれ」という意味で「86世代」と呼称する。国会出過半数を握る「共に民主党」の大部分も「86グループ」に属する。
政治改革が議論されるたびに86グループの退陣論が出るが、選挙シーズンに少し頭をもたげるだけで、実質的に崩壊したことはない。前政権の文在寅(ムン・ジェイン)政権も、86グループ体制から生まれ出た巨大な権力だった。
文在寅前大統領を中心とした左派、親北朝鮮組織は86世代の象徴的な存在だ。彼らは、進歩的な社会改革を夢見て社会に進出したが、その結果として残ったものは、公正とはほど遠い、ダブル・スタンダードと偽善の社会である。
参与連帯、民主社会のための弁護士会、全国民主労働組合総連盟などの86ネットワークは青瓦台(大統領府)、司法部、あらゆる政府委員会、国有企業の要職を占めたが、振り返ってみれば、国民から税金を吸い取ることが政権交替の目的だったように映る。
民主化運動に没頭し、勉強を放り出した86グループの時代錯誤的な政策のせいで、被害に遭っているのは86世代の子供である。新入社員として採用される道を塞いでしまった「非正規職ゼロ」政策が代表的だ。
そして、文在寅氏の家族は、もはや貴族を超え、王族として君臨するようになった。