「金メダルを取ってほしいと思ったことは一度もない」
──本橋さんは「地域に愛される、長く応援してもらえるチーム」を掲げてロコ・ソラーレを率いてきましたが、すでにその目標は達成され、いまや全国、世界中から注目されるチームになりました。
本橋:ここまでになるとは思っていませんでしたが(笑い)、やはり私たちだけの力ではなく、集まってくれたスタッフやスポンサーさん、地元で応援してくださる皆さんの尽力のおかげだと常に感謝しています。
──ロコ・ソラーレの代表理事になられて以降、本橋さんは日本カーリング協会でマーケティング委員を務めるなど、カーリング界全体の普及活動もされています。
本橋:カーリングのリンクがあるのはどうしても北国に偏っていて、専用シートは長野県より上にしかないので、全日本選手権を関東のアリーナアイスで実施したいという提案をして準備も進めています。ウインタースポーツとして環境がものをいうところもあるので、今後ますます広がっていけばいいなと思っています。
──カーリングが楽しめる環境があちこちに整えば、競技人口の増加も期待できますね。
本橋:もちろん、カーリングを始める人たちが増えてくれれば嬉しいですし、その一方でトップアスリートも増やしていかなければいけないので、私たちロコ・ソラーレだけでなく、協会をはじめ日本全体で計画をつくってやっていくべき課題だと思います。
──本橋さんにとっては、次代のロコ・ソラーレを担う選手たちを育てるロコ・ステラの活動も大事な普及活動ですね。
本橋:ロコ・ステラはすごく強い子たちを集めたわけではありませんが、カーリングが大好きでやる気のある子が育っていますので、そのやる気と環境がうまく交わればロコ・ソラーレみたいな選手がどんどん出てくるのかなと。男子でも「笑顔を持ち味にしてやってます!」と言ってくれるような子もいて、「もしかして私たちの影響を受けてる?」と嬉しく感じます(笑い)。
──海外選手を見ていると、本橋さんのように結婚・出産でブランクを経て選手に復帰するレジェンド的なプレーヤーがいるなど、カーリングは年齢に関係なくできるスポーツでもあります。いまのロコ・ソラーレの選手たちの活躍もまだまだ見たい気がします。
本橋:本人たちも「まだ全然楽しみたい」と言っています。そこは若い選手たちがどれだけ強くなれるかという問題なので、いまのトップ選手にはあまり気にせずのびのび最大限までできる環境を私たちは整えてあげたいし、若い子たちには「いつかお姉さんみたいになりたい」というタイミングで踏ん張れる場所を準備してあげたいです。
──4年後のミラノ(コルティナ)オリンピックは今のロコ・ソラーレのメンバーでぜひ金メダルを狙ってほしいです。
本橋:正直あまりそこまで肩の力は入っていません。平昌から北京に至るまでに、選手みながメダリストという肩書きやプレッシャーを背負いすぎて等身大でいられない時期があったことも知っていますしね。自分の人生の中で「カーリングをやってて本当に良かったな」と思える時間を少しでも長く過ごしてほしい、それだけです。
私も「絶対にオリンピックに出て金メダルを取ってほしい」と思ったことは一度もありませんし、ケガなく元気でいてくれれば彼女たちらしいプレーが自ずと出る。そのプロセスを皆で共有できているので、これからも変わらず等身大でいてほしいです。ただ、今回の北京を見ていて、彼女たちは自分たちの残した功績への向き合い方、次のステージに入っていくための気持ちの切り替えも本当に上手になったなと感じました。