カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」代表理事の本橋麻里氏

 今年開催された北京冬季オリンピックで、前回大会(2018年平昌の銅)を超える銀メダルを獲得するなど大活躍だった女子カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」。どんな場面でも笑顔を絶やさぬチームを一から築き上げた代表理事(GM)の本橋麻里氏は、自身もトリノ、バンクーバー、平昌大会でプレーしたオリンピアン。2030年の冬季オリンピックに名乗りを上げる北海道・札幌の招致活動でプロモーション委員にも選出された本橋氏にとって、オリンピックとはどんな大会なのか、またカーリング界の未来についてもたっぷりと語ってもらった。(聞き手はJBpress編集部)

ロコ・ソラーレの強さの秘密とは?

──今期最終戦となる日本選手権(5月29日決勝)でのロコ・ソラーレ優勝、おめでとうございます。今年は北京冬季オリンピックで銀メダルを獲得するなど大活躍のシーズンでしたね。

本橋麻里氏(以下敬称略):ありがとうございます! 選手たちも最後までケガなくプレーできてホッとしています。いまは疲労が溜まっているでしょうが、回復する方法も各自で身につけているので、オフに入って心と身体を休ませている時期だと思います。

──ロコ・ソラーレは本当に強いチームに成長したと思いますが、本橋さんから見て強さの秘密はどこにあると思いますか?

本橋:「もう出来てるな」と思ったことでも、選手たちは「いや、まだここが出来てない」と課題を見つけるのが上手ですし、普通の人なら逃げてしまうことでも正面から向き合っている。それは試合中の作戦面だったりフィジカルだったり、栄養面など体調管理でもそうです。「まだここまで掘り下げるのか……」と私も日々驚かされています。

北京冬季オリンピックで銀メダルを獲得したロコ・ソラーレの選手たち(右から、藤澤五月、吉田知那美、鈴木夕湖、吉田夕梨花、石崎琴美)

──試合中の笑顔の裏で、選手たちは並々ならぬ努力をしていることが伝わります。かつては「楽しんでカーリングをする」というモットーがうまくマスコミにも伝わらなかったそうですね。

本橋:もちろん皆でワイワイという時間もありますが、基本的にはカーリングを楽しむための個人個人の自己管理、準備ができているからこそだと思います。

 私もジュニア時代、「楽しむ」というキーワードを出すと、先輩から「その言葉は使わないほうがいい」と言われました。企業に支えられているアマチュアスポーツという流れがあるからだと思います。ただ、その後、日本のスポーツの捉え方が変わり始めていた頃に選手になって、海外チームを見ると誰ひとり苦しそうにやっていない。“義務”ではなく“意思”でやっていることに刺激を受けました。このままいったら日本では、カーリングは次代を担う若い子たちが誰も振り向いてくれないスポーツになってしまうという危機感を覚えて、まずは意識や環境を変えていかなければならないと強く感じました。

 仕事も同じですが、楽しいという思いがあれば想像以上の力を発揮することができますよね。お金を稼ぐためという理由よりも、仕事で人を楽しませたいという目的が生まれてくるとすごいエネルギーになる。突き詰めていくと、相手が弱い、自分が強いではなく、純粋にどれだけベストの力を出せたかということが最も大事な尺度になり、素直に相手を認めることもできるようになります。北京オリンピックもまさにそういう大会だったと思います。

©Loco Solare

──ベストを尽くしたロコ・ソラーレの活躍もあり、いまやカーリングは日本中に知れわたる人気スポーツになりました。やはりオリンピックでメダルを獲得すると反響も違いますか?

本橋:じつは北京オリンピックの余韻に浸る間もなく、選手たちはカナダに遠征(プレーヤーズ選手権)に行きましたので、あまり周りを気にしている余裕はなかったんです。私もプレイングマネージャーを務める育成チーム(ロコ・ステラ)のほうが忙しかったですし。

 ただ、ロコ・ソラーレにお手紙をたくさんいただいたりもして、本当に多くの人がオリンピックを見てくださったんだなと実感しています。