お吸い物は「ハレの日」の料理なんです。大阪なんかでは「おすまし」するのはハレの日です。「今日は、ちょっとええおべべ着てどないしたんや。おすまししてるな」なんて言ったりしてね。番組の最後の日、ハレの日ということで、若竹のお吸い物を作りました。そして季節の兆しを感じられるということで、セリの菜のまぜご飯。

 あと、だし巻き卵を加えました。大阪でだし巻き卵というと、ちょっとしたご馳走なんです。普段は卵焼きにだしは入れへんからね。だから、やはりハレの日の料理ということですね。

「こうでなければいけない」を崩したかった

──土井さんが「おかずのクッキング」や著書などで唱えられてきた「一汁一菜でよい」という提案に救われたという人がいっぱいいるそうですね。「料理のプレッシャーから解放された」「気が楽になった」という女性が大勢いると聞きました。番組の中では「分量も大体でいいんです」とも、おっしゃっていたとか。レシピ通りに作らなくてもいいということですか。

土井 家庭料理の作り方は本当に大体でいいし、私としては料理の「こうでなければいけない」というのを崩したかったんですね。

 たとえば「料理は化学だ」とおっしゃる人がいます。粉とか液体とか材料の分量をきっちり計量して調理時間も正確に守らなければ別の料理になってしまうと言うんです。西洋のパンとかケーキはそういう世界ですね。