新刊『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮社)を著した料理研究家の土井善晴さん

 日常の食事は具沢山の味噌汁、ご飯、そしてお漬物があれば十分──。料理研究家、土井善晴さんの「一汁一菜でよい」という提案は多くの人の心を捉え、家庭料理の世界に新たな潮流を生み出した。土井さんは、一汁一菜とは思想、美学であり、日本人としての「生き方」だと唱える。家庭料理を通して見えてくる「和食の神髄」「日本人の暮らしの本当の豊かさ」とは? 土井さんに話を聞いた。(鶴岡 弘之:JBpress編集長)

「おかずのクッキング」の最後のメニュー

──土井さんが司会を務め料理を教えた長寿テレビ番組「おかずのクッキング」(テレビ朝日系)が今年(2022年)3月に終了しました。どれくらいの間、出演されていたのですか。

土井善晴さん(以下、敬称略) 34年です。父(筆者注:料理研究家の土井勝氏)の後を継いで出演したのですが、父の代からすると48年ですね。もう半世紀続いていた番組です。

──最後のメニューは、筍のお吸い物、セリの菜のまぜご飯、だし巻き卵だったそうですね。最後はこのメニューにしようと前から決めていたのですか。

土井 いえ、具体的には決めていなかったんですが、最後は、ちょっと「ハレの日」の「一汁一菜」にしてみようと。