この裁判は、ロシア疑惑の捏造の疑いについて捜査する特別検察官ジョン・ダーラム氏による刑事訴追の結果、開かれた。

 ロシア疑惑に対しては、2017年5月にロバート・モラー特別検察官が任命され、2年に及び捜査したが、共謀を裏づける証拠はないとの結論を出した。その後、逆に民主党側に不透明な動きがあったことがわかり、真相解明のためトランプ前政権の末期2020年10月にコネチカット州の連邦検事だったダーラム氏がその捜査の特別検察官に任命された。

 ダーラム特別検察官はバイデン政権下でもガーランド司法長官の公認の下、捜査を続けてきた。その結果、2021年9月、同検察官はワシントン連邦地裁の大陪審でマイケル・サスマン弁護士を偽証罪で起訴した。

 サスマン弁護士は2016年の大統領選中、クリントン選対と契約したパーキンス・クーイ法律事務所に所属し、同選対の顧問弁護士となっていた。だが、その事実を隠して連邦捜査局(FBI)に「トランプ陣営はロシアのアルファ銀行などと共謀のため秘密の交信を行っている」と虚偽の密告をしたとされ、偽証罪で刑事訴追された。なお「トランプ陣営とアルファ銀行の秘密のつながり」については、その後のFBIなどの捜査でまったく根拠がないことが判明している。

 しかしトランプ氏が大統領の座に就いた2017年1月以降も、ロシア疑惑はこの「トランプ陣営とアルファ銀行のつながり」という情報に加えて、トランプ氏とロシアの醜聞めいた絆を伝えた「スティール文書」なども報じられて、真実性を持つかのような様相を見せていった。だがその後、「スティール文書」もクリントン陣営の発想と依頼による虚偽文書だったことが明らかになった。