モスクワで行われた対独戦勝利77周年軍事パレードに出席したアレクサンドル・ボルトニコフ FSB(ロシア連邦保安庁)長官(2022年3月9日、写真:ロイター/アフロ)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・経済安全保障マネジメント支援機構上席研究員、元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 2022年2月24日、ロシア軍が突然、ウクライナに侵攻した。正規軍17万人をはじめ特殊部隊、民間軍事会社などが投入されたが、思ってもみないロシア軍の脆弱ぶりが明らかになった。

 こうした状況に加え、ロシア軍に対応したウクライナ軍の予想以上の善戦も相まって、戦争は長期化の様相を呈している。

 こうした状況にロシアが追い込まれた原因には、ロシア軍の士気の低さ、ロジスティックスの軽視、旧式兵器の投入、楽観的な作戦計画など様々な問題があるが、特に問題なのは、侵攻前における拙速で偏見に満ちた情報分析だ。

 この原因は、ウクライナにおける情報収集を担当していたロシア連邦保安庁(FSB)の予想外の混乱である。FSBは、本来、ロシア国内の治安維持が主務であるが、CIS(独立国家共同体)諸国内においての限定的な諜報活動も行っている。直接の担当はFSBの第5局だ。