「建国以来の大動乱」も人災
中国との国境が封鎖され、国民の困窮度が高まった北朝鮮では、中朝間の密貿易が横行するようになる。今年1~4月には一時再開された中朝貨物列車の運行も一時再開された。
だがこうした中国との往来の再開は、新型コロナウイルスをも北朝鮮にもたらすになった。
感染が特に広がったのは今年4月以降だ。感染拡大の原因と見られているのは、タイミング的に考えてもこの時期に行われた大規模な政治行事である。金日成主席生誕110周年(4月15日)や抗日パルチザン結成90周年(4月25日)などの記念日には、パレード・舞踏会・体育大会・人民芸術祝典・閲兵式が行われ、各種行事に人民数百万人動員された。
金正恩総書記も事態を重くとらえているようだ。
今月13日、朝鮮中央通信は、12日に金総書記が国家非常防疫司令部を訪問したことを伝え、「4月末から原因不明の熱病が全国的な範囲で爆発的に感染拡大され、短い期間に35万人余りの発熱者が発生した」と報じた。この時点での一日の感染者は、1万8000人ほどであったが、その後も急速に拡大、13日には17万4000人と増え、16日午後6時基準では4月末からの累計発熱者は148万3060人となった。
この状況に対し金総書記は「全国のすべての道・市・郡が自分の地域を封じ込め、住民の便宜を最大に保障しつつ事業単位・生産単位・居住単位別に『隔閉』措置を取る事業が重要だ」「主動的に地域を封じ込めて有熱者などを隔離措置し、治療に責任をもって行って感染空間を遮断することが急務」と強調したという。
金総書記は「建国以来の大動乱と言える」としながらも、「強い組織力と統制力を維持して防疫闘争を強化していけば危機を克服できる」と封鎖による対応を再度求めた。
他方、金総書記の特別命令で、16日からは医薬品普及のため人民軍が投入された。この措置について中央日報は「防疫網が崩れて死亡者が続出する中、遅れた医薬品の普及も党の愛民行為として包装し、内部の結束に余念がないということだ。これは現在の新型コロナ危機を独自の力で克服するという意志の表現」と報じている。