こうした過ちは、二度と繰り返してはいけない。北朝鮮国民に向けた人道援助が金正恩氏だけを利することは絶対に避けなければならない。

核ミサイル開発が招く国民生活の窮乏

 昨年4月8日、北朝鮮の金正恩総書記は第6回労働党の末端組織の責任者会議で「人民の苦労を少しでも減らすため」に「さらに厳しい『苦難の行軍』を実行すると決心した」と述べた。

 金正恩総書記は1990年代の状況と21年の状況を重ねて発言したとみられる。会議が始まった6日にも、国は「過去最悪の状況」「前例がないほど多数の課題」に直面したと発言した。

 しかし、こうした国民生活の窮乏を招いたのは、北朝鮮の核ミサイル開発だ。これによって国際社会が北朝鮮に対する経済制裁が強化された。また現実を無視したコロナ対策、金氏一族崇拝のための行事も原因である。

 まず、核ミサイル開発に対する国際社会の経済制裁の影響で、北朝鮮はコロナ禍前でも1000万人が食料不足の状況にあったという。

 そこにコロナ禍が襲ってきた。北朝鮮は世界的に感染が拡大する中で、この2年間、「新型コロナ感染症清浄地域」と主張してきた。この間は国境の封鎖によってコロナウイルスの流入を防いできたが、各国のようにワクチンの接種や大規模なPCR検査は行わなかった。また、感染症対策としての医療体制も脆弱なままであった。

 北朝鮮の貿易の9割は中朝貿易であるが、感染対策のため中朝国境を封鎖した。これにより頼みの中朝貿易額は、2014年の76億ドルから昨年は3億ドルに急減した。