北朝鮮への非核化要求は断念?
ジョー・バイデン米大統領が5月20日から22日まで韓国を訪問、韓国の尹錫悦大統領と会談する。
バイデン氏にとっては、5年ぶりに同じ土俵で話ができそうな保守派現実路線の大統領が韓国に誕生した。
訪韓の後は、訪日、クアッド首脳会議、その後はロサンゼルスでの米州首脳会議と目白押しの外交日程をこなして、グローバルな反中・反露連帯の形成を目指す。
ソウル行きのバイデン氏のカバンには尹氏あての仰山なお土産がびっしり詰まっている。米外交安保専門家たちが指摘しているカバンの中身は以下の4つだ。
一、対北朝鮮政策についての米韓の共通認識
二、対中国政策に対する米韓の共通認識
三、米韓日の三角同盟関係の強化
四、韓国のクアッドへの事実上の参加要請
北朝鮮の金正恩氏は今何を考えているのか。
北朝鮮は5月12日午後6時半頃(日本時間同)、平壌の順安空港一帯から日本海に向け、短距離弾道ミサイル3発を発射した。
韓国軍によれば、弾道ミサイルの最高高度は約90キロ、飛行距離は約360キロ。
韓国の尹錫悦大統領が5月10日に就任してから初めての発射だ。韓国の聯合ニュースによると、軍は弾道ミサイルに区分される「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」とみて分析している。
北朝鮮は5月12日、新型コロナウイルス感染者の発生を初めて公表。国内の防疫態勢を強化する一方で、国防力の増強も進める方針とみられる。
北朝鮮は5月7日にも短距離の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と推定される1発を発射したばかりだ。
バイデン政権は、北朝鮮が相次ぐミサイル実験と並行して月内には4年8カ月ぶりの核実験に踏み切ると見ている。
米シンクタンク「パシフィック・フォーラム」のブラッド・グローサーマン上級顧問(多摩大学教授)は、核・ミサイル開発を本格化する金正恩氏の本心をこう分析する。
「これまで金正恩氏は国家存続、つまり金王朝存続のために核開発を行ってきたが、今や敵と実際に戦うための戦闘力と考えるようになっている」
「(ジェーン・ディフエンスのアジア太平洋担当編集者)ガブリエル・ドミニク氏も指摘しているように、日米韓の通常戦闘力には太刀打ちできなくなってきた脆弱性を補うための核ミサイル開発に踏み切った」
こうした対北朝鮮認識は、アンドレ・ランコフ氏(ソウル国民大学教授=ロシア国籍)も共有している。
「従来は国防目的の核兵器だったが、今や金正恩氏にとっては核兵器を持たなければ侵略されるという恐怖心の副産物として、韓国に攻め込む最終的な夢の実現に役立つ核兵器という認識に至っている」