(ミン・ジェウク:日韓関係専門家、フリーランサー記者)
「名残り惜しさと胸に詰まる想いが交差するが、金委員長と手を握って、韓半島の運命を変える、確実な一歩を踏み出したと考える」
退任を控えた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が4月20日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に送った親書には、こう書かれていた。
米国をはじめとする対北朝鮮制裁につながった13回のミサイル実験、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射、核実験予告など、国際社会を挑発し続ける北朝鮮に対して、「平和プロセス」が成功したと自画自賛する文大統領の言葉には、同じ韓国人としても赤面するばかりである。
文大統領の自画自賛にあきれるのは、事実関係の歪曲と美化を繰り返しているからだ。
彼は、同じ4月20日に開催された、退任前の総理および長官級の人々との昼食において、海外の首脳陣と会談や電話した際に、韓国が多くの賛辞を受けたと強調し、5年間の功績を自ら称えた。
その後も、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾訴追で失脚させた「ろうそく革命」によって誕生した民主的な政権ということ、合法的な政権交代を通じて民主主義を蘇らせたこと、新型コロナ対策「K防疫」や経済成長で成果を残したことなどを理由に、国内外から絶賛されたと述べている。
この自画自賛は大統領府も同様で、文政権の5年間における国政課題の推進状況や結果を掲載した「文在寅政権国民報告」のホームページ(https://report.president.go.kr/main.do)を見ると、文大統領の代表政策については絶賛および好評一色の評価である。