スタジアムに支持者20万人を集めて行われたクリミア併合8周年の記念イベント(3月18日、写真:ロイター/アフロ)

 プーチン戦争指導部が迷走の度合いを深めているようです。

 私が「敗戦」を前提にプーチン(政権)の末路について具体的に記したのは、3月16日公開の本連載(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69294)でしたが、この頃はまだ畏友・佐藤優など「今回はロシアが軍事的に勝利」との予測が出ており、筆者として公開には一定の勇気が必要でした。

 その風向きが変わり始めたのは3月18日でした。

 米中首脳電話会談、そして翌週ジョー・バイデン米大統領がポーランドに飛び、23日にはロシア大統領特別代表を務める新興財閥のチュバイス氏の亡命が明らかになったあたりには敗色は隠しようもなくなりました。

 開戦から1か月目の翌3月24日には「キーウ(キエフ)占領電撃戦失敗」によるロシアの「実質的敗北」は、グローバルには衆目の一致するところとなります。

 2022年4月、いまやプーチン「大本営発表」を鵜呑みにするのはロシア国内の情報受け身層に限られています。

 しかし、問題はそうした受け身層が(様々な理由で)決して少なくない点で、ロシア国内はまだ「翼賛勢力」が幅を利かせている現実があるようです。

 戦争を支持して調子に乗る「八紘一宇好き」は、いつの時代、どこの国にも出現する。

 それでも富豪の高官チュバイスに限らず、比較的経済状況に余裕のあるロシア市民が近隣諸国に脱出し始めれば、一般大衆もざわつき始めるものです。

 敗色が濃厚となったロシア戦争指導部でプーチンが「孤立」しつつあるとか、出身母体である旧KGB「鉄の結束」のはずが・・・とか(https://www.asahi.com/articles/ASQ306J2XQ30UHBI02V.html)的外れな日本語見出しも目にするようになしました。

 あるいはKGBの後身である連邦保安局FSB「クーデターか?」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2022032900687&g=int)といった報道も見られ、ロシア戦争指導部は混迷の度合いを深めている。これは間違いないでしょう。

 まあ、そもそも本当に「鉄の結束」があったなら、あんな凄まじいスターリン大粛清など、起きるわけがありません。

 一寸先は闇というソ連~ロシアの国情が恐怖政治体制を維持しているとみるべきです。

 亡命したロシアスパイを執拗に暗殺する、あれがどう「鉄の団結」なのか?

 冷戦期「007映画」の記憶でも引き摺っているのではないかと疑いたくなります。