(オセラビ:作家・コラムニスト)
大韓民国の第20代大統領選挙が終わった。3月9日に行われた大統領選挙で、野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が歴代大統領選挙の最小得票差で当選した。与党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補との差は24万7077票で、わずか0.73ポイントの差だった。
今年5月10日に就任する尹錫悦次期大統領には、国政課題が山積している。共に民主党は政権の維持には失敗したが、国会で過半数を超える172議席を有する巨大野党だ。共に民主党が議会権力、行政権力、地方自治権力を掌握している現実は、尹次期大統領が円滑に国政を運営する上で障害となる。
その中でも重要なのは、尹次期大統領が対日外交政策をどのように展開するのかだ。
文在寅政権の外交安保政策は、就任当初から親北朝鮮、親中に偏向しており、日本との関係は最悪だった。政治的扇動といえる反日感情で、日韓関係は最悪の状況に陥った。 2019年7月から始まった貿易紛争や長年の課題である慰安婦、徴用工、独島(竹島)紛争である。中でも貿易紛争が反日感情に火をつけた。
当時を振り返れば、日本製品不買運動が始まり、「ノージャパン(NoJapan)」が韓国社会を席巻していた。2018年には、韓国の最高裁判所が徴用工の賠償判決を下し、日本製鉄(旧新日鐵住金)の資産の差し押さえを決定。福島産海産物の輸入制限など両国間の外交的、政治的対立が激化していた。その最中の2019年7月1日、日本の経済産業省が半導体とディスプレイに使用される素材の韓国向け輸出制限を発表したのだ。
貿易紛争は、文在寅政権の外交政策を主導する勢力に反日扇動の口実を提供した。ノージャパン運動が1年近く続く中、政策を批判した人たちは「親日派」のレッテルを貼られて非難を浴びた。反日扇動は与党・共に民主党に有利に働き、共に民主党は2020年4月の国会議員選挙で圧勝した。