核弾頭の搭載が可能な中国人民解放軍の中距離弾道ミサイル「東風17」(資料写真、2019年10月1日、写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 ロシアのウクライナ侵略に対して中国がどう反応するか、習近平政権にとってロシアの軍事侵攻はプラスなのかマイナスなのか。米国ではこの議論が高まってきた。その議論の中で日本の安倍晋三元首相が言及した米国の核兵器の共同管理(核シェアリング、核共有)への歓迎論が注視される。

 プーチン大統領のウクライナ軍事侵略が中国の対外戦略にどう影響するかをめぐってはワシントンでは侵略当初から活発な論議が展開された。最初はロシアの侵略が中国の軍事野望を利するという見解も多かった。

 たとえばハドソン研究所の軍事専門家のブライアン・クラーク研究員が2月25日に発表した論文は、「ロシアの侵略は米国の弱みを露呈させ、共産・中国に青信号を与える」と題して、ロシアの動きが中国の台湾攻撃を容易にする、という見解を示していた。

 しかしロシアの軍事侵略が残虐に拡大すると、米国の国政舞台での中国論議も変わってきた。中国がプーチン大統領の行動への支持を述べながらも、一方で留保をつけるという屈折した態度も、米側の微妙な変化の一因となったようだ。