ところが、砲火の下でウクライナ魂が発揮された。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は変貌を遂げ、国民の勇気と抵抗を具現化する戦争指導者になった。
主戦論者の楽観主義から、プーチン氏は怠惰になった。
ウクライナがあっという間に陥落すると確信するあまり、自国民を戦争に備えさせることもしなかった。
ロシア軍の一部の部隊は、軍事演習をやるとか、解放軍として歓迎されると聞かされていた。ロシア市民は同じスラブ人である同胞との紛争を受け入れる用意はなかった。
戦争はないと確約されていたエリートの大半は屈辱を覚え、プーチン氏の無謀さに唖然としている。
そしてロシア大統領は、退廃的な西側諸国は常に自分の要求をのむと信じていた。
実際には、ウクライナの例を見て、欧州各国の首都で大規模な行進が始まった。庶民の声を聞いた西側諸国の政府は、ロシアに厳しい制裁を科した。
ほんの1週間前にはヘルメット以上に殺傷力がある兵器は送らないことにしたドイツは今、関与によるロシア懐柔を基盤とする数十年来の政策を覆し、対戦車、対空兵器を送り込んでいる。
エスカレーションの危険
こうした逆転に直面し、プーチン氏はエスカレートしている。
ウクライナでは、主要都市の包囲に動き、一般市民を見境なく殺すよう戦車を動員している。これは戦争犯罪だ。
ロシア国内では、自分の嘘を倍加させることで国民を服従させ、スターリン以来最も厳しい国家テロの支配下に置いている。
そして西側に対しては、核戦争の脅しを突き付けている。
世界はプーチン氏に立ち向かわなければならない。
そして説得力を持つためには、たとえ西側諸国の経済にコストを強いることになったとしても、プーチン氏が戦争を仕掛け、自国民を虐待することを可能にしている財源を政権から奪う意思があることを見せつけなければならない。
プーチン氏が2014年にクリミアを併合した後に考案された制裁は、抜け穴と妥協に満ちていた。
クレムリンは抑止されるどころか、何のお咎めもなく行動できると結論づけた。