誘われてクレー射撃を見に行っただけなのに
写真週刊誌のカメラマンだった私が射撃を始めたのは、20年近く前、報道の現場で知り合った同業者から「射撃場に見学に来たら」と誘われたからだった。いわゆる散弾銃を使用するクレー射撃だ。面白そうだから見に行ったというスタンスで、射撃を始めるつもりはまったくなかったのだが、勧誘の圧に折れて、当時住んでいた近所にあった戸塚警察署(東京都新宿区)へ後日向かうことになった。また、夏に行われる「狩猟免許試験」を受けるようにと強く促された。そう、同業者の鉄砲撃ちの彼らは、ハンター集団だったのだ。クレー射撃はちょっとしたお遊びで、本気の趣味はハンティング・・・ということだ。この時の私は、「何かわからんけどやってみよー」と軽く始めてみたものの、手続きの多さ煩雑さに翻弄され続けることはまだ知らない。
銃を持つ手順としてまずは住所地の警察署の生活安全課へ行き、鉄砲を所持したい旨を伝え、所轄圏内で開催される初心者講習会に出ることから始まる。講習会の後に〇×形式の試験があり、50問の9割正解が合格ラインだ。それに合格すれば実銃での射撃教習、それもパスすればようやく鉄砲を選ぶ準備が整う。欲しい鉄砲の写真とデータを携え、所持許可申請を行う。
(余談だが、私が引っかかった問題に『銃のケースがなかったので風呂敷で包んで持って行った。〇か×か』というのがあった。答えは驚きの〇である。腹黒い引っかけ問題にうっかり引っかかってしまう素直さがこの頃の私にはまだあって、担当警察官から「ギリギリだったよ」と教えてもらったことは今でも覚えている)
申請が行われた後、警察による「身分のバックグラウンドチェック」が実施される。そのチェックの期間は個人個人で異なる。チェックが終わって「この人に銃を持たせても大丈夫」というお墨付きが出て、所持許可証が発行されるのだ。
ちなみに仲間内で最速のお墨付きをもらったのは地方の新聞社の社主の娘さんで、たったの一週間だったそうだ。私の場合は親の職業がよくわからないとあって(フリーランスの調査・探偵業)、軽く1カ月は警察から連絡が来なかったのを覚えている。
鉄砲を始めるのに必要な要件は、一言でいえば過去を含め「後ろ暗いことがない」こと。暴力団関係者はもちろん許可されないし、縁者もダメだ。本人の逮捕歴などももちろんNGとなるらしい。経済状態や精神状態も判断の対象だ。犯罪防止の観点からだろうが、家柄や社会的地位の背景に加え、性格的なものをより重視すべきだと思う。なぜなら許可銃の犯罪は、家族間や隣人など人間関係でのトラブルによる「立てこもり」「発砲」が多い印象で、カッとなりやすい内向的なおじさんがやってしまいがちなのだ。