といっても殺人事件に発展したのは最近では2007年の佐世保の乱射事件、2022年1月のふじみ野市の医師射殺事件の2件である。前者がきっかけで銃刀法の大幅な改正が行われ、内容が相当厳しくなった。その結果、許可銃による殺人事件は2022年の後者まで15年もの間なかったことになる。改正した銃刀法が機能していると言えるのではなかろうか。

猟をするには必須の猟銃・空気銃所持許可証や狩猟者登録証

「銃欲」は無し

 射撃教習をパスして「鉄砲を選ぶ準備が整う」と書いた。しかし、八百屋でみかんを買うように好き勝手に銃砲店で銃を購入できるわけではない。前述したように欲しい鉄砲の写真とデータを銃砲担当の警察官に渡してお伺いを立てる必要がある。

 2007年の佐世保の事件の影響で規制が強化された結果、それまでは許可されていた銃も新規では許可が下りないケースが増えた。狩猟に使用できる銃であっても「軍用銃」「狙撃銃」と見なされれば所持できないし輸入もできない。私が所持許可を受けたのは平成15年、つまり2003年で佐世保の事件以前であるが、銃マニアではないので許可が難しそうな銃は追求しなかった。

 というよりも、戦争や紛争取材で一般の人よりは銃を目にする機会は多かったのに、何せ興味がないのでよくわからなかったのだ。当時は散弾銃とライフル銃の区別もついていなかった。なので仲間内二人が所持していたベネリ社のM3Super90(エムスリースーパー90。マニア垂涎のコンバットショットガンという意見もあるが普通に買える)という銃をチョイスした。

 この銃はストックが樹脂製、全体が真っ黒で見た目もかっこいい(個人的な意見です)。スラッグ銃身も用意されているため、交換することで射撃場でのクレー射撃やカモ猟は長い銃身、エゾ鹿猟では短い(スラッグ)銃身、と使い分けることができるのが特徴だ。本来ならば「〇〇用にはこの銃」、というふうに複数持つのがスタンダードだが、複数所持するとその分手続きは増え、手数料も増える。当時写真週刊誌の専属カメラマンという立場だったので新銃を買うことができたものの、所詮は明日をも知れぬフリーランス、浮草のような身には一挙両得、一石二鳥の銃であった。

 ちなみに現在主に使用しているのは、先述したフィンランド製のサコーM75デラックスというライフル。日本では銃所持許可を受けて10年経過しなければ、ライフル銃を持つことが許されていない。銃欲のない私は、知人からあげるよ、と言われるまで申請しなかったので13年が経過していたのだった。