P&Cは平成7年(1995年)4月から開始し、平成9年(1997年)7月までに11事業13施設対象事業に指定し、平成20年度(2008年度)の安佐南区総合福祉センターの完成により、9事業10施設(以下参照)が完了しました。

①安佐南区総合福祉センター/村上徹(デザイナー名、以下同)/2008年5月(完成年月、以下同)
②基町高等学校/原広司/2000年3月
③矢野南小学校/富田玲子/1998年3月
⑤東千田公園/山本紀久/1999年3月
⑥猿猴川アートプロムナード/佐々木葉二/2007年8月
段原リバーフロント地区建築誘導/錦織亮雄/2007年3月
⑦中工場/谷口吉生/2004年2月
⑧西消防署/山本理顕/2000年3月
⑨市民てづくりの里/三田育雄/2001年3月
⑩宇品内港埋立地区高層複合住宅整備等/藤本昌也/2001年3月

 90年代には、公共建築の設計発注を、競争入札や設計競技ではなく、「特命」で行おうという機運が高まった時期があった。熊本県の「くまもとアートポリス」がその先駆けで、岡山県の「クリエイティブTOWN岡山(CTO)」や広島市の「P&C」などがそれに続いた。くまもとアートポリスは当初、建築家の磯崎新氏が、CTOは岡田新一氏がそれぞれコミッショナーを務め、設計者選定の中心になった。広島市の「P&C」では、特定の1人の建築家ではなく、地元の学識経験者や都市整備局長、関係局長が設計候補者を検討した。

 そんな仕組みがなかったら、中工場のような建築が実現することはなかったし、この映画「ドライブ・マイ・カー」も全く違ったものになっていたかもしれない。

「P&C」のことは覚えていたが、今回調べて、正式名称が「ひろしま2045」であったということを思い出した。原爆投下から100年後の財産をつくるという意味だ。原爆ドームから平和公園を経て海に抜ける“平和の軸線”は、この映画によって世界に知られる共通財産となったと言ってよいだろう。映画内では名前が出ることはないが、中工場の設計者である谷口吉生氏と、同氏を設計者に推薦した誰かに、改めて敬意を表したい。

所在地:広島県広島市中区南吉島1丁目5-1