「日建設計」という会社は、一般の人にはほとんど知られていないだろう。同社は、建築設計分野では世界最大級の設計会社だ。書籍『誰も知らない日建設計』を執筆した元建築雑誌記者の宮沢洋氏が、同社のユニークさを4回にわたり読み解く。その2回目。(JBpress)
第1回はこちら
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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67790
前回、「大組織は無個性」というイメージは、日建設計という会社には当てはまらない、と書いた。拙著『誰も知らない日建設計』(2021年11月発刊)では、2000人の社員を擁する日建設計が、同社120年の歴史で初となるデザイン戦略をまとめ上げる過程を描いている。
コロナ禍の2020年、同社はオンラインの議論によって戦略をまとめた。“全員参加”で、1年がかりの議論である。その戦略は「日建デザインゴールズ」と名付けられ、2021年1月から運用されている。
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この規模の会社であれば、選抜メンバーで戦略の草案をつくって経営会議で了承を得るのが普通だろう。それがなぜ“全員参加”で議論するかというと、日建設計が“縛られ嫌いの集まり”だからだ。「上から押し付けたものには社員が従わない」という共通認識が社内に浸透しているのである。
1年にわたり繰り広げられた議論の詳細は拙著を読んでいただきたいのだが、今回はそのまとめ役である「CDO」(チーフデザインオフィサー)というポジションを任された2人のうちの1人、山梨知彦氏(日建設計常務執行役員)について知っていただきたい。社員全員を書くことはできないが、上に立つこの人を知ることで日建設計のユニークさがかなり分かると思われる。