“美術館の名手”にゴミ処理施設を発注した英断

 …と、そんなことは私の妄想に過ぎないので、せっかく中工場に興味を持ってくれた人のために、実際の写真を見ながら建築がらみのうんちくを1つ。

 この清掃工場がなぜ、谷口吉生氏の設計で実現したのか、である。通常、こういう施設は、過去に同種の実績がないと設計者選定の土俵に上がることはない。“美術館の名手”として世界に知られる谷口氏だが、ゴミ処理施設の実績はなかった。

“美術館の名手”についてはこちらの記事参照→谷口吉生氏設計の金沢建築館で「谷口美術館11」展、シャンとした会場に漂う「場の空気」、https://bunganet.tokyo/kanazawataniguchi/

 これは広島市の「P&C(ピースアンドクリエイト)」事業の1つで、設計が特命(名指し)で谷口吉生氏に発注されたのだ。広島市が1995年から約2年間実施した事業で、正式名は「ひろしま2045:平和と創造のまち」事業という。以下、広島市の資料から引用。

「ひろしま2045:平和と創造のまち」(以下、「P&C」という。)は被爆50周年を記念し、2045年のひろしまに向けて優れたデザインの社会資本を整備していこうとするものです。P&Cの目的は、広島の都市景観形成において重要と認められる本市の建設事業について、計画段階から建築、土木、ランドスケープ等のデザイン力に優れたデザイナーを選定・起用し、特徴ある自然環境を生かしながら、人々に潤いと安らぎを与え都市の風格を高めるような個性ある美しい都市景観の創造を推進していくことにより、広島のアイデンティティの形成を図ろうとするものです。