ロシアの大統領・ウラジーミル・プーチンは2月24日、ウクライナに対する大規模な攻撃を命じた。
主権国家ウクライナに対するプーチンの暴挙は、明らかな国際法違反であり、ウクライナのみならず欧州および世界の安全保障体制を根本から揺るがしている。
最近、私は情報戦(IW: Information Warfare)について書籍『日本はすでに戦時下にある』(ワニ・プラス)を書いたり、講演することが多くなってきた。
情報戦は現代戦において最も重要で基本的な戦い(warfare)であり、「攻撃と防御の両方の作戦を含む、競争上の優位性を追求するための情報の使用と管理に関する戦略」と定義される。
この情報戦は、ロシアがウクライナを併合した時に採用したとされるいわゆるハイブリッド戦(Hybrid Warfare)の重要な構成要素であり、特に中国やロシアは重視し採用している。
情報戦は幅広い概念で、情報を使って相手のものの見方・考え方や行動をコントロールして目的を達成しようとする政治戦、影響工作(Influence Operation)、心理戦、認知戦などを含んでいる。
中国などはさらに、サイバー戦、宇宙戦、電磁波戦など情報が関係するあらゆる戦い(Warfare)を情報戦の範疇に入れている。
情報戦は、平時および戦時を通じて行われるが、特に戦争開始前の情報戦は非常に重要である。
平時において情報戦が成功すると、孫子が言うところの「戦わずして勝つ」ことができる。
ロシアや中国は情報戦大国である。
しかし、プーチンのロシアは、今回のウクライナ侵攻前後の情報戦において、ジョー・バイデン大統領の米国に敗北した。これが私の結論である。
本稿においては、なぜプーチンはバイデン政権との情報戦に敗北したのかについて説明する。