どれほどの戦力を動かしているかは不明だ。ただ、英米の諜報報告でずっと主張されていたように、プーチン氏はウクライナ全土を手中に収めたがっているようだ。

 行動に出ることで、同氏は政治的なリスクと利益を推し量る普段の計算を退けた。

 その代わり、自分には歴史との約束がある、これは運命なのだという危険な妄想に駆り立てられている。

NATOへの異常な執着

 仮にプーチン氏がウクライナ領の大部分を奪取することになっても、国境線で止まって和睦することが見込めないのは、そのためだ。

 旧ソビエト連邦の一部だった北大西洋条約機構(NATO)加盟国に攻め入ることは、少なくとも当初はないかもしれない。

 だが、勝利で慢心したプーチン氏はこれらの国を、紛争までには至らないサイバー攻撃や情報戦の標的に据えるだろう。

 プーチン氏は今後、そうやってNATOを脅かしていく。なぜなら、NATOがロシアやその国民を脅かしていると考えるに至ったからだ。

 同氏は2月下旬の演説で、NATOの東方拡大に怒りを露わにした。

 その後、西側がウクライナで「ジェノサイド(集団虐殺)」を支援しているとの話をでっち上げ、激しく非難した。

 プーチン氏としては、ロシア国民に対して、自由を手に入れたウクライナの同胞をロシア軍が攻撃していると言うわけにはいかない。

 そのため、ロシアは米国やNATO、そしてその代理勢力と戦争をしていると話している。

 忌まわしい真実は、プーチン氏が隣の主権国家を正当な理由なく攻撃し始めた、ということだ。

 大統領は、ロシアの西に存在する防衛同盟に取りつかれている。そして、21世紀の平和を下支えしている原則を踏みにじっている。

 世界がプーチン氏に対し、今回の攻撃について大きな代償を払わせなければならないのはそのためだ。