ロシア国家を支えるもう一つの柱である自由主義の資本家やテクノクラートにとっては、自分たちが敗れたしるしがまた増えることになる。
トップクラスの優秀な人材がますます国を離れ、そのほかの人々はただあきらめる。経済の低迷と憤懣は反対運動につながり、そうなればさらに乱暴な対応がなされるだろう。
では、これらをすべて承知のうえでプーチン氏がウクライナ侵攻に踏み切ったらどうなるだろうか。
今回の危機で最も恐ろしい展開はこれかもしれない。ロシア側も西側も相手の裏をかこうとしているからだ。
2月15日にはロシア連邦議会下院が、ウクライナ東部のドンバス地方における2つの自称「共和国」を承認するようプーチン大統領に促した(この2つの勢力は、現状は支配していないウクライナ領内の広い地域を自分たちのものだと主張している)。
プーチン氏がいつでも好きな時に引ける引き金が1つ増えた格好だ。
自棄になって侵攻する可能性
戦争になればウクライナが荒廃するだけでなく、戦争の脅威をはるかに上回るダメージがロシアにもたらされる。
西側はさらに刺激を受け、ロシア産天然ガスに背を向ける決意を固める。ウクライナは長く尾を引く問題になり、ロシアはお金と人をどんどん失っていく。
そしてプーチン氏は社会からのけ者にされる。
ロシア自体も、短期的には制裁によって、そしてその後はさらに強化された経済自立政策と弾圧によって荒廃することになろう。
プーチン氏は自分で自分を窮地に追い込んだ。追い詰められて攻撃に出る恐れもある。今回は野心を封じて撤退したとしても、後で攻撃に出るだけかもしれない。
そのような破滅的な選択を抑止できる可能性が最も高い対策は、プーチン氏が繰り出す脅威に西側陣営が毅然とした態度を取ることだ。