プーチン氏が被った損失のうち最も興味深いのは、ロシア国内でのそれだ。

 ロシアは要塞経済の構築を試みてきた。外貨準備を積み増し、米ドルで抱える外貨準備の割合を引き下げた。

 国内企業の外資依存度を低下させる一方、半導体からアプリケーション、そしてネットワークそのものまで網羅する独自の「技術スタック」構築に力を入れてきた。

 さらには、今でも外貨獲得の主要な手段である炭化水素の新たな買い手を見つけることを期待して中国に接近してきた。

 こうした取り組みは、西側諸国から科される制裁の潜在的なダメージを減じてはいるものの、完全に取り除いてはいない。

 ロシアからの輸出のうち、欧州連合(EU)向けは今でも27%を占めている。中国のシェアはその半分ほどだ。

 ロシアから中国に向かう天然ガスパイプライン「シベリアの力」は、2025年に完成しても、欧州に現在送られている量の5分の1しか運べない。

 深刻な紛争が生じれば、国際決済ネットワーク「SWIFT」を通じた制裁やロシアの大手銀行への制裁が発動され、金融システム全体が世界から切り離される。

 中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)に対する輸入規制のようなものも、ロシアのハイテク企業には大きな困難をもたらすだろう。

中国にさらに接近するリスク

 プーチン氏はこの相互依存と共存できるし、逆に中国にいっそう接近することもできる。

 しかしそれをやってしまうと、ロシアを外交上の仲間でありコモディティーを安価に提供してくれる発展の遅れた国だと見なしている、冷徹な政治体制の子分になってしまう。

 これは、プーチン氏が首にはめられて喘ぐくびきとなる。

 この独裁国家同士の連携は、ロシア国内に心理的な負担ももたらすだろう。

 プーチン氏がシロビキ――ウクライナで西側との結びつきや民主主義が強まると、自分たちがロシアを支配・略奪する力が脅かされると考えている安全保障当局の幹部たちのこと――に依存していることが露呈する。