例えば、最難関私大の早稲田大学政治経済学部でも、入学者827人のうち共通テストや一般選抜では393名しか入学していない。付属校などから289人、指定校推薦で97人も入学しており、一般入学者は半数を切っているのである。(出典:旺文社ムック『2022年度用 大学の真の実力 情報公開BOOK』)
早稲田大学政治経済学部は入試に数学を課すようになったことでマスコミから高く評価されているのだが、その試験を受けて入学する学生は定員の半分ほどなのだ。
(参考:外部サイト)早稲田政経だけじゃない! 文系でも「数学重視」の入試をおこなう大学の狙いとは(AERA dot.)
https://dot.asahi.com/dot/2022020100051.html
慶應義塾は方式別入学者数が非公表だが、募集人員から考えると似たようなもので、一般受験入学者の方が少ない学部は存在する。上智大学も推薦が6割だ。
付属や帰国子女を増やしての「多様なエリート集団」へ
こうなってくると、冬の一般選抜試験を受験の本番と考えて準備していた受験生が不憫に思えてくるが、この現状を名門私大側はどう考えているのか。
朝日新聞の取材に対し、早稲田大学政経学部の教務主任を務める荒木一法准教授が答えているインタビューが興味深い。
その中で荒木准教授は「政経学部への推薦枠を広げてほしいという保護者や学校側の要望が強かった。附属・系属校出身者は優秀でGPA(成績評価)も高い」と説明している。またAO入試導入時の経緯については「多様な学生を採るため」「慶応義塾大学に帰国生向けの入試があり、当時、帰国生は慶応に入ることが多かった。AO入試は帰国生が受けやすい入試なので、帰国生を増やしたいという目的もありました」とも述べている。
こうした文脈から推察するに、早稲田が学生に求めている多様性とは「日本全国から幅広く」とか「親の所得の多寡に関係なく」ということよりも、そつなく勉強をこなす附属出身の秀才や海外経験豊富な帰国子女といった「エリートたちの多様性」であることがうかがえる。
実際、早稲田大学の入学者は首都圏1都3県の高校出身者が8割を占め、地方出身者の割合は激減している。他の首都圏の難関大も同様の傾向にある。それでも指定校や共通テストで地方にも目を配っていると大学側は主張しており、これが首都圏の難関私大の考える「公平な入試」のようだ。
(参考:外部サイト)早稲田政経・荒木一法さん「この20年で様変わりした政経学部の入試」(朝日新聞EduA)
https://www.asahi.com/edua/article/14533277