1月27日、小泉純一郎元首相とともに都内で記者会見を行い、脱原発を訴えた菅直人元首相(写真:つのだよしお/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 立憲民主党の菅直人元首相の言動が物議を醸している。

 まずは、日本維新の会に関する「ヒトラー」発言だ。1月21日に自身のツイッターにこう書き込んでいる。

〈橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし、「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす〉

 これに維新は猛反発。菅氏は立憲民主党の最高顧問であることから、1月26日に維新の藤田文武幹事長が、同党の泉健太代表あてに撤回と謝罪を求める抗議文を提出。しかし、泉代表が「菅氏の個人的発言」とつっぱねると、こんどは維新の馬場伸幸共同代表が、2月1日に衆院議員会館で隣の菅氏の事務所にメディアを引き連れて乗り込んで、抗議文を手渡している。その模様はネット上でも公開されているが、ここまでくるともはや抗議を利用した互いの宣伝活動だ。

「新たな暴走老人」の声も

 菅氏の言動は、政府、自民党も反発している。

 欧州連合(EU)欧州委員会が、二酸化炭素を出さない原発を地球温暖化対策に資する“グリーン”な投資先として認定する方針を示したことに、首相経験者として小泉純一郎、細川護煕、鳩山由紀夫、村山富市の4氏と連名で、方針撤回を求める原発反対の書簡を1月29日までに送っていた。

 この中に、東京電力福島第1原発事故で「多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しんでいる」との記載があったことに、岸田文雄首相は2月2日の衆院予算委員会で「誤った情報を広め、いわれのない差別や偏見を助長することが懸念される。適切でない」と発言。名を連ねた元首相5人に宛て、山口壯環境大臣が注意を求める書簡を送ったことを明らかにした。自民党の高市早苗政調会長も同日の会見で、強く抗議している。

 こうした菅氏の言動に立憲民主党内から「新たな暴走老人」と呼ぶ声があることを伝えるメディアまで出てきた。