人間は永遠の生を求める。この探求、この不死への意志こそが人類の業績の基盤である。そして「どのようにして不死を達成するか」、根底には4つの基本形態しかない。それぞれの「不死のシナリオ」によって不死が実現しうるのかを、4回に分け、一つずつ検証する。(JBpress)
※本稿は『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』(スティーヴン・ケイヴ著、柴田裕之訳、日経BP)より一部抜粋・再編集したものです。
前回記事「ノーベル賞学者を虜にした不老不死のビタミン療法」では、不死のシナリオのうち、第1の基本形態「生き残りのシナリオ」を見た。しかし科学革命が約束してくれた、より長い寿命をもってしても、地上で永遠の生を得る見通しは相変わらず立ちそうにないことがわかった。
ノーベル賞学者を虜にした不老不死のビタミン療法
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68681
だが、地球は不毛の荒野ではない。万物が死ぬが、それでも世界は生命力にあふれ、緑に満ち、花が咲き誇っている。春のブルーベルはあまりにあっけなく枯れてしまうが、翌年には地面からまた生えてくる。自然界では、死は終わりではなく、もっと大きな周期、すなわち、生と死と再生の周期の一部にすぎない。
それを見て取ったおかげで希望を与えられた人は多い。彼らは、もしこの希望がなければ、肉体の衰えを甘んじて受け容れるしかない。彼らは、私たち人間も他の生き物同様、ほんの束の間栄えた後、消え去ることを承知している。だが、ブルーベルの場合と同じで、そうして消え去るのは、再生の前触れにすぎぬことを期待している。これが、不死のシナリオの第2の基本形態「蘇りのシナリオ」だ。
脳の心理的情報を記録しておけばいい
死者を蘇らせるには、尋常ではないことが必要とされる。だが具体的には、私たちの最終的な限界を超越することを期待させる、最先端の研究を促している説が3つある。人体冷凍保存と、マインドアップローディング(心のアップロード)と、超知能にまつわる各説だ。