ジャイナ教徒(Reykjavik, IcelandからClaude Renault, CC BY 2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で)

 世界史では、宗教的マイノリティーが時として大きな役割を果たすことがあります。この連載の第65回で触れた、イギリスのアジア進出にアルメニア人が大きな貢献を果たしていたことも、その一例と言えるでしょう。

(参考)英国のアジア進出に貢献、故地追われたアルメニア人
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64573

 今回も、ある宗教的マイノリティーについて紹介したいと思います。ダイヤモンド産業で存在感を発揮する、インドのジャイナ教徒です。

 よく知られているように、ダイヤモンドビジネスで中心的役割を果たしてきたのは、長期間にわたり、ユダヤ人でした。ただあまり知られていないかもしれませんが、近年、ジャイナ教徒の役割が非常に大きくなっているのです。

 そこにはどのような背景があるのでしょうか。

ジャイナ教とはどんな宗教か

 高校の世界史の授業では、ジャイナ教は、仏教とほぼ同時代、同じインドで誕生したことを学びます(前6〜前5世紀)。その始祖はヴァルダマーナ(マハーヴィーラ)と呼ばれる人物です。

マハーヴィーラ像

 手元にある山川出版社の『詳説世界史 改訂版』には、〈ジャイナ教は、仏教と同じく、バラモン教の祭式やヴェーダ聖典の権威を否定した。とくに苦行と不殺生を強調した点に特徴がある〉とされています。バラモン(司祭)、クシャトリア(武士)、ヴァイシャ(農民、牧畜民、商人)、シュードラ(隷属民)という厳しいカースト制度を規定するバラモン教に対するアンチテーゼとして、仏教やジャイナ教が誕生したことが分かります。そしてその教えは現代にも受け継がれています。