1月中旬、バイデン政権は、2022年初頭からの北朝鮮による極超音速ミサイルと称する新型ミサイルの発射などに対して、初めて北朝鮮高官6人らに対する直接的な制裁措置を発表した。しかしバイデン政権は、トランプ前政権が「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)」という政策標語を真正面に掲げて北朝鮮に圧力をかけたのに対して、ずっと柔軟に見える「現実的アプローチ」をとると言明してきた。しかしその結果は、この1年、米朝両国政府間の折衝や交渉がまったくないままに終わっている。
ボルトン氏、北の核武装が実現してしまうと警告
こういう状況下の北朝鮮問題について、トランプ前政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務め、北朝鮮との交渉にも関与したジョン・ボルトン氏が1月14日、「1945」という安全保障専門誌にバイデン政権の政策を批判する論考を発表した。
「北朝鮮はなぜ静かなのか」と題する同論考は、トランプ前政権が停止を求めた核兵器開発実験や長距離弾道ミサイルの実験発射を北朝鮮は2017年以来敢行していないので、金正恩政権の軍事動向は静かにもみえるが、米国への核とミサイルの軍事脅威の増強は決して止まったわけではない、と警告していた。
ボルトン氏はそのうえで以下のような骨子を述べていた。
・バイデン政権には、北朝鮮の完全な非核化を断固として実現させるという強い意思が欠けており、現在の対北政策はオバマ政権時代の「戦略的忍耐」と同様になってきた。しかし、北朝鮮が自らの意思で核兵器を全廃する見通しがないことは明確であり、米国は北朝鮮に非核化を余儀なくさせる圧力をかけねばならない。