北の核問題に関して、持久戦略を選択した金正恩総書記(提供:KCNA/UPI/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 誰もが予想していたように、朝鮮戦争の「終戦宣言」は既に過去の出来事になってしまった。韓国と米国がいくら北朝鮮に終戦宣言を促しても、なしのつぶてである。

 その理由は明らかだ。結論から話せば、韓米が目論む北朝鮮の核放棄戦略と、金正恩総書記が推し進める核戦略には妥協の余地がなく、金正恩総書記から役に立たないと判断されたためだ。

 それでは、金正恩総書記の北核戦略とは何だろうか。それは、米国との直接的なトップ・ダウン方式で、将来の非核化を前提とした「終戦宣言」を実現するという戦略だ。ところが、非核化の前に終戦宣言を出してしまえば、北朝鮮があとでちゃぶ台を返すリスクがあるため、これに米国は否定的だ。だから条件が熟するまで耐えようというのだ。言うなれば、長期的な持久戦略である。

北朝鮮が核実験場を破壊した瞬間(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 となると、枯死寸前の北朝鮮が、どれだけ長く持ちこたえられるかどうかかが、カギを握る。金正恩総書記は、耐えれば運が向くと楽観視している。「3本の柱」があるがゆえに、長く耐えることができさえすれば、時間は自分たちの味方だと妄想しているからだ。今回は、金正恩氏がすべてを賭けた「持久戦略」の成否を決める、3本の柱について述べよう。

【関連記事】
金与正による初の軍隊視察が暗示している北朝鮮内部の地殻変動(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67851)
金正恩が新型SLBMの発射実験に参加しなかったのはなぜか(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67577)