(舛添 要一:国際政治学者)

 2021年、世界は新型コロナウイルスに翻弄され続けたままである。6月以降、重症になりやすいデルタ株に襲われたが、11月に南アフリカでオミクロン株が確認され、感染が一気に世界に広まった。あまり重症化しないようだが、感染スピードが速く、一気にデルタ株からオミクロン株へ置き換わっている。

2年以上も収束しない感染症はスペイン風邪以来

 感染症の歴史を振り返ると、2年以上も感染が収束せずに続いた例として、100年前のスペイン風邪がある。1918年3月に確認されてから1921年まで収束しなかった。このインフルエンザは、日本では1918年8月から1921年7月まで猛威を振るった。当時の日本の人口は5500万人であるが、感染者はその43%に当たる2380万人、死者は39万人に上った。世界では、人口20億人のうち、その3分の1が感染し、1700万人〜1億人が死亡したと見られている。

 今回の新型コロナウイルスについては、世界人口78億人に対してコロナ感染者は2億8280万人であり、死者は541万人である。日本では173万人が感染し、1万8000人が死んでいる。

 この1世紀に医学は大きな進歩を遂げたが、発生から2年経ってもコロナの感染は収束していない。スペイン風邪流行当時は、電子顕微鏡など存在せず、ウイルスの特定も不可能だったのであり、有効な治療薬もないまま、感染が続いてしまった。

 1世紀後の今日、ワクチンもmRNAの技術で迅速に作られ、また経口治療薬「モルヌピラビル」も承認されたが、2年以上の長期のパンデミックとなっている。残念ながら、このパンデミックが収束する展望はまだ見えてこない。

 急速に感染が拡大するオミクロン株がさらに弱毒化し、飲み薬で容易に治療できるようになれば、普通の風邪となってしまう可能性もあるが、それには数年は必要だという意見もある。同じコロナ型であるSARSは、ある日突然存在しなくなった。ウイルスには未知な部分が多々ある。人類とウイルスとの戦いは続く。

 ウイルスであれ細菌であれ、新たな病原体は10年に1度は生まれると見られている。最近の例を見ると、SARS、新型インフルエンザ、MERS、新型コロナウイルスと、平均すれば6年に1度は発生している。これは、気候変動の影響によるところが大きいと言われている。